「娘と付き合わせたくないグループNo.1」SixTONES チャンスをつかみ損ね続けてきた男たちがデビュー

2020年1月22日

デイリー新潮

 2020年1月22日にジャニーズ事務所からデビューする「SixTONES(ストーンズ)」と「SnowMan」。同事務所からのデビューは、King&Prince以来約2年ぶり、ジャニー喜多川氏が2019年7月に亡くなってからは初となる。競争の激しいジャニーズのなかで、彼らはいかにしてデビューを獲得したのか。本稿では「SixTONES」に焦点をあて、デビューまでのけわしい道のりやグループの素顔に『ジャニーズは努力が9割』の著者・霜田明寛氏が迫ります。([文]「元祖ジャニヲタ男子」/WEBマガジン「チェリー」編集長・霜田明寛)

つかみ損ねたチャンス

 光を浴びるまでの期間――それは、誰にとっても苦しいもの。

「光があるかもしれない」と信じて努力を重ねるのは大変なことではありますが、一度スポットライトを浴びた人間が、もう一度光を浴びようとする日々もまた、想像を絶するものがあります。

 そんな一度スポットライトを浴びた男たちが集まるのが、2020年1月22日にジャニーズ事務所からデビューする「SixTONES」です。

 ジャニーズ事務所からは実に約2年ぶりのデビューとなる彼らですが、現在24歳前後のメンバーを中心に構成されていて、2年前にデビューしたKing & Princeや、2011年にデビューしたSexy Zoneよりも平均年齢は上。この2組を始めとする多くの同世代や後輩たちのデビューを、ジャニーズJr.として見送り続けてきたのが彼らなのです。

 メンバーは、ジェシー(23)、京本大我(25)、松村北斗(24)、郄地優吾(25)、森本慎太郎(22)、田中樹(24)の6人。「俳優・京本政樹の息子・京本大我を擁する……」といった惹句がつくと、華やかに活躍し続けてきたかのような印象を与えますが、そうではありません。

 森本慎太郎は、デビュー決定発表の直前、自分たちの境遇をこう的確に表現していました。

「打ち上がってる途中の花火みたいなもんだよね。バン!が来なくて、ずっと『ヒュ~~~…』って昇ってる音だけが聞こえてるっていう(笑) 『いつ開くの』?っていう状況が、もう何年も続いてる」(「日経エンタテインメント!」2019年10月号)

 実はメンバー6人のうち3人が、11年前の2009年に、すでにCDリリースをした経験があります。

 森本慎太郎は、12歳で松竹配給の映画「スノープリンス 禁じられた恋のメロディ」で主演し、「森本慎太郎w/スノープリンス合唱団」としてその主題歌を歌い、CDも発売。

 松村北斗と郄地優吾も「中山優馬 w/B.I.Shadow」のB.I.Shadowのメンバーとして参加。当時の平均年齢14.6歳は、オリコンのデビュー曲による初登場首位最年少記録でした。

 しかし、2つのユニットはその後、CDをリリースすることはありませんでした。B.I.Shadowは、メンバーの中島健人と菊池風磨がSexy Zoneとしてデビューすると自然消滅という、悲しい結末に。

 その後2012年に、彼ら6人とAKB48が共演したドラマ・映画「私立バカレア高校」が人気を博し、注目を浴びます。その6人での活動に期待が集まるも、グループとして結成されるのはさらにその3年後の2015年。同じ年にKing & Princeが結成され、人気を集めたことを考えると、「なぜ、もっと早く……」感が否めません。もちろん、デビューまで長い時間がかかったグループは、同日デビューを果たすSnowManや先輩のA.B.C-Zなど他にもいます。

 ただ、SixTONESの特筆すべきは、“周りの仲間を抜く悲しみも、抜かれる悲しみも両方知っている”という点です。

 小学校3年生でジュニア入りした森本慎太郎は、前述した映画の主演など、脚光を多く浴びていた入所初期の頃を振り返って、こう語っています。

「『仕事をするたびにどんどん友達がいなくなる』という気持ちでやってた気がします。現場では明るく振る舞いながら家で泣いたりしてました」(「日経エンタテインメント!」2012年8月号)

娘と付き合わせたくないグループ

 SixTONESは、メンバーの田中樹が好きなお酒の種類を聞かれて「テキーラ、ショットで。一番コスパいいと思うから」と答え「今のところの印象は多分、“娘と付き合わせたくないグループNo.1”(笑)」(「日経エンタテインメント!」2019年10月号)と自虐しているように、わかりやすく言えば不良っぽいルックスと佇まいのグループ。先輩グループではデビュー時のKAT-TUNに近い印象です。世間的にイメージされる“ジャニーズ顔”が6つ揃った感じでもなく、その個性もバラバラです。

 京本大我は「僕らは基本、揃うことがない。ダンスも揃わないし、特技もバラバラだし、売りもみんな違うし」と語っています。「ダンスが揃うことがない」というのはバックダンサーも務めるジャニーズJr.としては致命的なことのようにも思えます。

 例えばKAT-TUNは、当初は堂本光一のバックダンサーを務めるグループとして2001年に結成されましたが、それぞれの個性が強かったグループ。曲のラストはみんなで揃えてピタっと止まらなければいけない時に勝手にそれぞれがワーッと踊っていた、なんてこともあったようで、幕が下りた瞬間に堂本光一から「お前ら、もう出なくていいぞ」と叱られた……なんてことも(「サンデー毎日」2019年12月22日号)。

“デジタル・ネイティブ”なジャニーズ

 そんな“不良たちの下積み”が花開いたのが2018年。YouTubeを使った人気の拡大という、これまでのジャニーズにはなかったやり方で、ジャニーズファン以外にもSixTONESの名前が広がりました。

 この年、ジャニーズJr.が YouTubeチャンネルを開設し、ファンとの接点が増加。SixTONESはそこで人気を伸ばし、滝沢秀明プロデュースによる初のMVを作成しました。11月に公開されたオリジナル楽曲「JAPONICA STYLE」は1300万回再生を超えています(2020年1月現在)。

 その勢いは止まらず、海外ではショーン・メンデスやBTS(防弾少年団)が務めてきた「YouTube アーティストプロモ」キャンペーンに抜擢されました。「ジャニーズをデジタルに放つ新世代。」というコピーとともに、品川や汐留など都内主要駅に彼らのポスターが掲出されたのです。

 同年12月に幕張メッセで行われた「YouTube FanFest Music JAPAN 2018」は歴史的なイベントとなりました。なぜなら、今までネットと距離をおいてきたジャニーズタレントによるネットライブの視聴者数が初めて公開された日となったからです。

 このイベントは他にも多くのアーティストが出演。つまり、ネットでの同時視聴者数で、人気や注目度が判明してしまいます。実際の数字を見てみると、TWICEで8万弱、他のアーティストの登場時は5~6万まで数字が落ち、大トリのSixTONESの登場で10万に。デビュー前のジャニーズJr.のユニットでありながら、他のアーティストと並んでも充分に戦える人気を持っていることが証明されたのです。

 2019年には滝沢秀明が演者としての芸能活動を引退して、ジャニーズJr.を育成する会社の社長に就任。滝沢の目標通り、自身のジュニア時代以来、約20年ぶりのジャニーズJr.黄金期と言われ、その勢いの中から、SixTONESとSnow Manが同日にデビューします。とはいえ、中には「実力ではなく、事務所によって作られたブームなのではないか」という声も。

 それに対して田中樹はこう語ります。

「今は正直、Jr.に波がきてるというより波を起こしてもらっているという感覚が強いです。(中略)でもたとえ作ってもらった波でも乗ってくらいついていかないと。その波を自分たちから発生させられるようになったら、本物の黄金期の再来」(「日経エンタテインメント!」2019年10月号)

「SixTONES」というグループ名は、ジャニー喜多川氏による命名で、当初は「SIXTONES」(シックストーンズ)という名前で、6つの個性が意識されています。

 一度は光を浴びた6つの原石。10年以上の時を経て、今度は自らが光を放ち始めるタイミング。浴びた光ではなく、自らが放つ光は、消えない光になることでしょう。

霜田明寛(しもだ・あきひろ)
1985(昭和60)年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーデションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。2019年8月現在は、WEBマガジン「チェリー」の編集長を務め、著名人インタビューを行う。3作の就活・キャリア関連の著書がある。

デイリー新潮編集部

2020年1月22日 掲載

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする