【本間 真二郎】水道水を飲むより「100倍ダメージ」が?じつはシャワーが危ないワケ 「新型コロナ第二波」に備える暮らし方

2020年7月1日

現代ビジネス

根本的な対策は不自然な日常を改めること

「手洗いをしすぎる、石けんを使いすぎる、消毒をしすぎることで、むしろ感染のリスクを高くするという考え方もあります。手荒れなどにもつながるため、感染のリスクを上げる場合があるのです」と、私は6月初旬に現代ビジネスに書かせていただきました。『意外! 新型コロナ「過度な手洗い、除菌」がリスクを高める』という一文です。

さらに、持論にも触れ、「新型コロナウイルスを恐れない唯一の方法、それは自身の自然治癒力になるのです」「薬への過度な期待を抱くよりも、腸内細菌を元気にして自分自身の免疫力をあげることこそ“薬”と私は考えるのです」とも説明しました。 

医師である私が、新しい感染症に対して、「医療は必要ない」と言っているようにとられた方も多く、「この時期に不適切な発言」とのご意見もいただきました。

しかし、私は現代の医療を否定するつもりは毛頭ありません。

薬の多くは対症療法ですが、ときには対症療法が必要な場面もあります。新型コロナウイルス感染症の重症化をおさえるためなど、いのちにかかわるようなときには積極的に使うべきです。

ただし、薬の多くは石油を原料とした「脂溶性の化学薬品」です。脂溶性のものは水に溶けにくいため、尿から排出することができません。そのため、からだの中に蓄積されることになります。

脂溶性のものは、リンパ管に入りやすいという性質もあります。リンパ管は免疫機能をつかさどる細胞の通り道でもあるので、ここに化学薬品がとどまると、免疫系に重大なダメージを引き起こし、感染症やがんなど、あらゆる病気の原因となるからです。

ですから、何より避けたいことは長期にわたって薬を使用することです。それよりも、食事や生活を見直すことを優先させることが根本治療と私は考えるからです。

では、新型コロナウイルス感染症に対しての「根本治療」「根本予防」とは何か。 

そこを突き詰めると、「どうすれば新型コロナウイルスに感染しても大丈夫な状態でいられるのか」に行きあたります。そのヒントは、不自然な日常を改め、自然に沿った暮らし方にあると確信しました。

私は近著『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』(講談社ビーシー/講談社)に、その具体的な暮らし方をまとめまています。

腸内細菌が免疫力を活性化し、健康を支える

すべては身の回りの常在菌(微生物)を排除することなく、腸内細菌を元気にする生活に集約されます。それは腸内細菌が人の健康を支えているからです。一人の人の体内には腸内細菌が1000種類以上、総数にして100兆個以上いると言われており、これら全体を「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と言います。

では、どんな働きをするのか。腸内細菌がいい状態では、人の腸内で健康を支える多くの役割を果たしています。

◉病原菌の侵入を防ぐ。
◉食物の消化、吸収を助ける。
◉有害物質(農薬、添加物、発がん性物質、放射性物質など)を分解する。
◉免疫を活性化させ、感染を防ぎ、炎症、アレルギー性疾患などを抑制する。
◉腸管運動を調節し、下痢や便秘を予防する。
◉腸管以外の臓器の機能を活性化させる。
◉脂質代謝を活性化させる。
◉酵素を活性化させる……。

いっぽう、腸の状態が悪く、悪玉菌が優位になると、悪さをし、病気の原因になっていきます。

◉腸内の腐敗を進め、下痢や便秘をおこす。
◉免疫力を弱める。
◉高血圧、がん、動脈硬化などの慢性炎症を引きおこし、様々な病気の原因をつくる。
◉発がん性物質をつくる……。

すべては身の回りの常在菌(微生物)を排除している結果であり、マクロ的な視点から見た、地球を傷つける行為とまったく同じと私はとらえています。

結局は、自然に反した行為がまわりまわって私たちのからだを傷つけ、病気を引きおこしているのです。

ぬか漬け、納豆、けずり節、豆乳など身近な発酵食品を

新型コロナウイルス感染症はもちろん、あらゆる病気に対し私たちの免疫力を発揮させるためには、やはり腸内細菌などの常在菌を整えることが大切です。そのためには「自然に沿って暮らす」ことへシフトしていくのがいちばんなのですが、とはいえ、いきなりすべてを変えることはなかなか難しいものです。

その第一歩として、まずは、発酵食品を取り入れる暮らし方をおすすめします。

日本は、世界でも有数の発酵食文化をもちます。毎日の食生活のなかで、みそ、しょうゆ、酢、みりん、ぬか漬け、納豆、けずり節、麹など、さまざまな発酵食品が使われています。こうした発酵食品が、昔から日本人の健康を支えてきました。

発酵食品は、微生物の働きで食品を発酵させることにより、栄養価や保存性が高まるなど、人にとって有用な食べものに変化した食品のことです。発酵を行う微生物には、一般に善玉菌と言われる麹菌、酵母、乳酸菌(ビフィズス菌を含む)、酢酸菌、納豆菌などがあります。

◉腸内環境を整える(整腸作用、便秘解消、腸内細菌の安定、免疫力アップなど)。
◉抗酸化作用がある。
◉デトックス作用がある。
◉うま味、甘みなど、風味がよくなる。
◉ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養価が高くなる。

発酵食品は、できるだけ天然素材(自然農や有機農でつくられた食材で、食品添加物を使用しない)、天然醸造(伝統的な製法)でつくられたものを選びましょう。

もし可能なら、自分でつくってみるといいでしょう。わが家でも、みそ、しょうゆ、みりん、酢、麹などは自作しています。つくり方を覚えれば、じつはそれほど難しくないのです。ほかにも、野菜や果物でつくった酵素ジュース、天然酵母をとって活用したパンづくりなど、いろいろな自家製の発酵食品を楽しんでいます。

ヨーグルトやチーズも代表的な発酵食品ですが、動物性食品であるため、とりすぎには注意が必要。その点、豆乳ヨーグルトはおすすめで、わが家では自作して毎日食べています。乳酸菌とひとことで言っても、何百もの種類があります。

腸内細菌は、できるだけ多くの種類が共存していることが望ましいので、多くの種類の発酵食品を積極的に食べましょう。

ダメージを与えかねない暮らし方の代表はシャワー

いっぽうで、腸内細菌にダメージを与えかねない暮らし方も改めるのが理想です。食と同様にいきなりすべてを変えるのは難しいでしょう。そこで、日常生活で気づかないうちに日々行っている「危険な行為」をまずは改めてはいかがでしょうか。

その代表がシャワーです。日本の水道水には、殺菌のための塩素が含まれています。塩素は、大腸菌を0.1ppm(1ℓに0.1mgの塩素が入った状態)で15分、0.2ppmなら一瞬で死滅させるとされており、その濃度が高くなればなるほど、人体にも深刻な影響を与えます。

プールから上がったあとに、目が充血し、肌がカサつき、髪の毛がごわごわするなどの経験は、誰にでもありますよね。日本の水道水の塩素濃度基準は、家庭の蛇口で0.1ppm以上であることとされていますが、問題は上限がないことです。

世界的に見ても、上限が定められていない国は日本だけです。実際に日本各地の水道水の塩素濃度を測定すると、ほとんどが1ppm以上で、諸外国の5~15倍にもなります。

塩素はほかの分子と結合しやすく、人工的に酸素と結合すると、次亜塩素酸となります。

これは消毒剤であり、漂白剤として使用されているものです。また、メタンなど水中の有機物と反応すると、トリハロメタンとなります。

これは、発がん性物質として知られ、催奇形性(妊娠中の女性が服用したときに胎児に奇形がおこる危険性)もあります。喘息)、動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞)、がん、奇形などが報告されています。

対策はシャワーヘッドに浄水器をつける

皮膚の常在菌がダメージを受け、バリア機能が破綻する塩素は、25度でガス化し、拡散するため、飲み水としての害以上に、密閉した浴室での害が大きいとされています。とくにシャワーの使用は、多量の水滴から気化するため、皮膚からの塩素の吸収は、飲んだときの100倍にも相当します。

15分のシャワーを浴びると、水1ℓを飲んだときの塩素量に相当するという報告もあります。また、近年のアトピー性皮膚炎の増加の一因に、水道水の関与が強く疑われています。

正常な皮膚の常在菌は、約10種類存在し、なかでも表皮ブドウ球菌とアクネ菌がおもなものとなります。これらは、皮脂や老廃物を食べ、脂肪酸を分泌し、皮膚を弱酸性に保つことにより、病原菌から守る役割を果たしています。

ところが、水道水には塩素が含まれていて殺菌の力が強く、水そのものも弱アルカリ性に調節されていることが多いため、皮膚の常在菌にとって大きなダメージとなります。皮膚の常在菌が減ってしまい、バリア機能が破綻することにより、免疫力の低下や、アトピー性皮膚炎が発症する原因になります。

塩素の害を減らすためにも、台所の蛇口だけではなく、浴室のシャワーヘッドにも浄水器をつけましょう。

牛乳を飲むことも自然に反する行為

もう一点、お伝えしたいことがあります。新型コロナウイルス感染症の予防や免疫力とは直接の関係は少ないのですが、牛乳を飲むことも実は控えたい行為です。

牛乳は、牛の赤ちゃんの飲みものです。すべての哺乳類のなかで、違う種類の動物の乳を飲むのは人以外にありませんし、離乳期をすぎて乳を飲む動物も人だけです。牛乳を飲むことは、自然に反しています。

終戦直後の栄養の行き届いていなかった人や子どもたちにとって、一時的な栄養源となったことはたしかかもしれません。しかし、なぜ日本人はいまだに牛乳を大量にとり続けているのか。牛乳の是非を議論する前に、その背景を知ることが大切だと思います。

まず、牛乳が人間のからだに合わない理由をあげてみます。

◉日本人の多くは、牛乳に大量に含まれる乳糖を分解できないために、下痢や腹痛をおこす。
◉牛乳には多くのカルシウムが含まれるにもかかわらず、最終的には逆に、カルシウムは体外へ排出され、これにより骨、歯はもろくなる。
◉牛乳は、妊娠中の牛からも搾乳されているため、女性ホルモンが含まれる。さらに強力に成長を促すインスリン様成長因子1(IGF‐1)も大量に含まれる。これらは、がん、早熟・早老、不妊の原因となる。
◉牛乳のたんぱく質(カゼイン)は、人のものと異なる異種たんぱく質であるため、消化管にダメージを与えたり、アレルギー性疾患などの原因になったりする。
◉牛の乳脂肪は動物性脂肪であるため、動脈硬化を引きおこし、脳出血、心臓病などの原因となる。
◉高温殺菌されており、たんぱく質やビタミンなどの栄養素の変性、分解がおこっている……。

これらの要因の複合により、牛乳は、以下にあげるさまざまな病気との関連があります。
乳糖不耐症(下痢、腹痛)、アレルギー性疾患、がん、動脈硬化(脳卒中、心筋梗塞)、自己免疫疾患、耳や鼻の病気(中耳炎、副鼻腔炎)、精神疾患(不眠、うつ病)、難病(ネフローゼ、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症)、その他(貧血、自閉症、多動性障害、白内障、慢性疲労)などです。

牛乳に関しては、嗜好品としていただく。そう考えていくのがベターではないでしょうか。私は小児科で多くのアトピーの子供たちを診ていますが、アレルギー症の方には特に注意して欲しいものです。

病気になるのは不自然な暮らしの結果である

感染症に限らず、すべての病気に共通することですが、病気になったということは、今までの生活のどこかに問題があったと考えられます。不自然な生活の結果として、病気になったということです。

ですから、病気になったときは、まず自分の生活を見直すことからはじめましょう。そして、病気の原因に気づき、自分と素直に向き合うことが、回復の第一歩になります。

今回の新型コロナウイルス感染症の世界的流行を機に、病気や健康についてだけでなく、社会のあらゆる面を見直すきっかけになることを期待します。