《Sexy Zone“セク鬱期”からの逆襲》“ポンコツ系アイドル”佐藤勝利と“天才型”菊池風磨がブレイクしかけている本当の理由

2021年6月11日

文春オンライン


《人気のある後輩がどんどん出てきているなかで取り残されるつもりはありません。誤解してほしくないのは、僕らは諦めてるわけじゃないってこと》(日経エンタテインメント! 2021年4月号)

 悔しさを滲ませながらも意欲的な調子でこう語るのは、ジャニーズ所属のグループ・Sexy Zoneの菊池風磨(26)。彼らは2011年に平均年齢14.2歳で華々しくデビューしたが、10年間とくに目立ったヒットや活躍に恵まれてこなかった。

 しかし、「僕らは諦めてるわけじゃない」という菊池の言葉通り、長く活動をしてきたSexy Zoneを取り巻く環境がいま、大きく変わりつつあるのだ。

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セクゾは故・ジャニー喜多川氏の肝煎りグループ

 思えば、デビュー時のSexy Zoneは将来を嘱望されたアイドルグループだった。

 Sexy Zoneは中島健人(27)、菊池風磨、佐藤勝利(24)、松島聡(23)、マリウス葉(21)の5人組。2011年11月のデビューは平均年齢14.2歳とジャニーズ最年少。彼らは故ジャニー喜多川氏(前社長)の肝煎りグループだった。

「セクゾがデビューしたのは、ジャニー喜多川氏が『最も多くのコンサートをプロデュースした』としてギネスに認定され、初めて素顔と年齢を公開した5日後のことでした。世間の耳目が集まりジャニーズがノリにノッていた時期だっただけに、当然セクゾも注目の的になりました。

 ロンドン五輪バレーボール世界最終予選のスペシャルサポーターに就任したり、デビューから1年足らずで国立競技場でパフォーマンスをしたり。手厚いお披露目の場が用意されていました」(スポーツ紙芸能デスク)

 2013年にはジャニー氏が自ら推薦文を書き、メンバーの菊池風磨が慶應義塾大学総合政策学部に合格。同年にNHK紅白歌合戦の初出場も決めた。しかし、雲行きは徐々に怪しくなっていく。

「ジャニーズグループはデビュー後にファンクラブ(FC)を発足させます。セクゾはデビューから1年半後の発足だったのですが、その発表は、当時最も人気だったHey! Say! JUMPの東京ドーム公演を“間借り”する異例の形で行われました。ジャニーズのFCは発足年に約10万人前後の会員が入会することが多いのですが、セクゾの会員数が10万人を超したのは発足3年目。この間、CDの売上も15万枚前後と、ヒット曲にも恵まれていません」(同前)

セクゾ分裂、キンプリとのキャラ被り…

 さらに2014年には突如メンバーが3人(中島、菊池、佐藤)と2人(松島、マリウス)に“分裂”。中島、菊池、佐藤の3人体制でシングル3作とアルバム1作をリリースし、3人以外のメンバーは固定せず、松島とマリウスの2人はグループから脱退はしないが、別の場所での活動が主になるとされた。こうした、セクゾの将来を悲観したファンのあいだで“セク鬱期”と呼ばれる時代が始まった。ジャニーズに詳しい芸能ライターが語る。

「正統派セクゾのファンも、その“分裂”をきっかけに応援するモチベーションがなくなってしまう人が相次ぎました。グループが分裂したことに多くのファンが悲しみました。しかも『大人組』の3人はいきなり野獣的な男っぽい路線の歌を歌いだすなど、これまでのセクゾとはあまりに違う売り方をして、余計にファンを反発させることになったのです」

 そして、Sexy Zoneの不遇が長引く決定打になったのは、2018年のKing&Princeデビューだろう。

「キンプリとセクゾの“キャラ被り”が話題になりました。同じ正統派路線でありながら、キンプリはメンバーの個性が際立っていて、テレビウケもよかった。セクゾの方が7年も先輩ですが、双方の年代が近いこともあってセクゾは“じゃない方”的な扱いを受けることもありました。CDの売り上げも2021年時点で平均20万枚程度。平均50万枚を売り上げるキンプリには完全に水をあけられています」(同前)

目立つようになってきた“ソロ売り”

 そんなSexy Zoneだが、2019年頃から徐々に風向きが変わってきたのだ。まず、スポットライトが当たったのが中島健人だ。中島は「ぐるナイ」(日本テレビ系)の人気企画「ゴチになります」のレギュラーに抜擢され、2020年夏にはドラマ「未満警察 ミッドナイトランナー」(日本テレビ系)でKing & Princeの平野紫耀(24)とダブル主演を果たした。

 この時期からだろうか。セクゾの“ソロ売り”が目立つようになってきた。冒頭でインタビューを紹介した菊池風磨の露出も急増している。

「昨年1月に放送された『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ系)で、菊池はジャニーズらしからぬ全裸を披露。その際に発した『許せない!』という渾身の一言がウケ、その後はドッキリ制作側としてレギュラー出演を果たしています。

 昨年4月からは、60分番組になった『ニノさん』(日本テレビ系)のレギュラーも獲得。今年5月にはバラエティ特番『カップルちゃんは侮れない!』(フジテレビ系)のMCとして、アンミカや橋下徹、さらば青春の光・森田哲矢などの癖のあるメンバーをまとめ上げました」(芸能記者)

ジャニーズ伝統の舞台「DREAM BOYS」主演に菊池が内定

 活躍の場は、テレビだけでなく舞台にも広がっている。

「実は未発表なのですが、ジャニーズ事務所が毎年上演している舞台『DREAM BOYS』の主演に菊池が内定しています。同公演は2004年から滝沢秀明、亀梨和也、玉森裕太などが座長を務めてきたジャニーズの伝統的なミュージカル。2019年と2020年にはキンプリの岸優太が座長を務めましたが、次回作で菊池に白羽の矢が立ったのです。2019年に舞台『HAMLET-ハムレット-』に主演して高評価を得たことや最近の活躍があってのことでしょう」(同前)

 菊池と仕事をしたことのあるテレビ局関係者は、菊池の台頭をこう評する。

「菊池はデビューしてから数年はセクゾの活動に積極的ではありませんでした。気分屋で仕事中でも不機嫌になることや、気に入らないことがあるとスタッフに突っかかっていくところが不安視されていた。ですが今はその奔放な性格が功を奏している。年上のスタッフや先輩に臆さずコミュニケーションを取っていて、現場でも好評ですよ。

 加えて、彼は『天才型』なんです。野性の勘で相手の求めることに応えられるタイプで、そういった機転の良さがウケている。今年3月11日にセクゾ初となる『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に菊池が出演した際、黒柳さんに『最後にファンの方にセクシーなひと言を』と無茶振りされたのですが、『ここでしかやらないですよ!』と照れながらも中島健人の“持ちネタ”『セクシーサンキュー!』をキメていました。黒柳さんも喜ばれて、放送後にはセクシーサンキューがTwitterトレンド入りしていましたね(笑)」

嵐・二宮「俺、菊池くん好きなんだよな」

 ジャニーズ事務所内でも菊池は“先輩殺し”の能力を発揮している。三宅は「俺、菊池くん好きなんだよな。バラエティ能力がすごい高い」「一つひとつのコメントが秀逸で面白い」(5月17日「三宅健のラヂオ」bayfm)とベタ褒め。4月8日から開設された元嵐・二宮のYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」にもレギュラー出演している。

「大学の先輩である櫻井翔にも可愛がられていますよ。櫻井と菊池は、菊池がデビューして間もないころから食事に行く仲で、キンプリとのキャラ被りが噂されていた2年ほど前にも、2人でサシ飯に行っています。菊池が今後について櫻井に相談していたようです」(前出・事務所関係者)

「ダンスも歌もダメ、良いのは顔だけ」佐藤勝利の受難

 独自の路線を見出しているのは菊池だけではない。Sexy Zone“不動のセンター”こと佐藤勝利も、マンネリからの脱出を図っているようだ。

 佐藤といえば、“圧倒的ビジュアル”でジャニー喜多川氏の寵愛を受けていた1人だ。

「ジャニーさんは佐藤をずっと『スペオキ』(スペシャルお気に入り)として可愛がってきました。『スペオキ』は滝沢秀明や松本潤など、くっきりとした眉に甘いフェイスのビジュアルが多く、整った顔立ちの佐藤も目をかけられていたようです」(前出・スポーツ紙芸能デスク)

 入所11カ月でセンターとしてデビューできたことからも、ジャニー氏が佐藤に寄せる期待が大きかったことが窺える。その期待通り、佐藤は2017年から毎年『ViVi国宝級イケメンランキング』(2016年から開始)に入選するなど、華々しい活躍をみせていた。

 しかし一方では厳しい評価もついて回っていた。

「完璧な顔立ちとは裏腹に、佐藤はちょっと音痴なんです。『少年っぽい声』とポジティブに捉えるファンもいますが、公演の生歌で音程を外すことはしょっちゅう。ダンスでも、上手いと評判の松島の隣で踊ることが多い佐藤は、比較対象になっていました。YouTubeなどで佐藤と松島の上半身の使い方を見れば、その差は歴然ですよ。『佐藤勝利はダンスも歌もダメ、良いのは顔だけ』と評されることが長年の課題でした。

 ジャニーさんが亡くなってからはセンターを外れることも多くなり、“不動のセンター”としての地位も崩れつつあります」(同前)

正統派イケメン佐藤が見出した“脱アイドル路線”

 さらに追い打ちをかけるように、上位常連だった『ViVi国宝級イケメンランキング』では2020年下半期にランキング選外という結果になった。しかし危機的状況で佐藤が見出したのが“脱アイドル路線”だ。

「実は佐藤は小学生の頃に自作のコントを作っていた程のお笑い好き。今年1月に佐藤がキスマイ北山とW主演した『でっけぇ風呂場で待ってます』(日本テレビ系)は、脚本にシソンヌ・じろう、空気階段・水川かたまり、ハナコ・秋山寛貴、かが屋・賀屋壮也などが名を連ねるシチュエーションコメディ番組だったのですが、佐藤の振り切った演技が好評だったのです。

 共演を機に芸人たちとも親交を深めたようで、自身のラジオ『Victory Roads』(bayfm)でもリスナーのお便りにツッコミを入れるなど、お笑いの勉強に励んでいるようです」(ジャニーズ専門誌ライター)

 ラジオでも独特のキャラを確立しつつあるようだ。

「本人が意識しているかは分かりませんが、ラジオのトークが卑屈で面白いと話題になっています。

 5月14日の放送では、『大学で中島と松島のファンの子と仲良くなった』というリスナーの長文お便りを読み終わったあと『俺のファンじゃないんかい』『俺最高でも3位じゃねえかよ』『なんだよおい横隔膜使って一生懸命喋ったんだぞ』など、卑屈なツッコミを入れて自分自身で笑っていた。正統派アイドルらしからぬひねくれたトーンが人気を博しつつあります」(同前)

デビュー10周年を前に迎えたブレイクの予感

 ここ最近はドラマ主演も相次いでいる。「でっけぇ風呂場で待ってます」以外にも、3月には「世にも奇妙な君物語」(WOWOW)に出演、2022年春には「青野くんに触りたいから死にたい」(WOWOW)に主演することが決定している。佐藤主演のドラマは2013年の「49」( 日本テレビ系)、2019年の「ブラック校則」(日本テレビ系)の2作のみだったが、この1年ですでに3作の主演が決定していることになる。

 デビュー10周年を前に迎えたブレイクの予感。菊池や佐藤自身の実力が増したからこそだろうが、実は彼らの躍進の裏にはジャニーズが抱える大きな問題も潜んでいる。それは先輩ジャニーズの崩壊だ。

「SMAPが解散、嵐は活動休止、今年11月にはV6が解散します。TOKIOは山口達也と長瀬智也が脱退して3人体制になりました。KAT-TUN、NEWS、関ジャニ∞もデビュー当時の人数から大幅に人員減しています。Sexy Zoneの先輩で、現在もメンバー全員で活動しているのはHey! Say! JUMPとKis-My-Ft2の2組だけ。そうした消極的な新陳代謝が起きていることで、セクゾに光が当たり始めたということもあるでしょう」(前出・スポーツ紙芸能デスク)

嵐の活動休止、人事異動が追い風に

 先輩ジャニーズの崩壊は、Sexy Zoneに は追い風になったようだ。

「先輩ジャニーズの活動休止や解散が影響してか、セクゾが昨年9月頃に部署異動になりました。現在は木村拓哉や生田斗真などソロ活動がメインのタレントを抱える『制作3部』に属しています。現在は退所した山下智久もかつて3部に所属しており、ドラマ主演の多い彼らを擁する3部の上層部はドラマのプロデューサーとの繫がりが深いと言われています。中島や佐藤など、活躍の場が広がるきっかけになったのではないでしょうか」(同前)

 ジャニーズ事務所に事実関係を確認したが、期日までに回答はなかった。

 これまで「いまいちパッとしない」印象がぬぐえなかったSexy Zone。2020年9月に松島聡が長期療養から復帰した直後、年末にはマリウス葉が活動休止を発表。理想的な状態とは言えない彼らだが、“逆襲”は今後どんな展開を見せるのだろうか。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))