22年ぶりの大河出演! 本木雅弘が初めて語った「SMAPと嵐が見た“景色”」――文藝春秋特選記事

2020年2月7日

文春オンライン

「文藝春秋」1月号の特選記事を公開します。(初公開 2020年1月9日)

 沢尻エリカさんの逮捕を受け、“前代未聞”の延期が決まったNHK大河ドラマ「麒麟がくる」。1月19日の放送を前に、斎藤道三役を演じる本木雅弘さんが2020年の新大河の魅力、そして今年活動休止となるジャニーズ事務所の後輩「嵐」への思いを「文藝春秋」に語った。

有働 年明け1月19日に放送されるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で斎藤道三の役を演じられます。数あるオファーの中でなぜこの役を選んだのですか。

本木 今回の大河は以前お世話になった「坂の上の雲」のスタッフが多くいて。彼らに「そろそろどうですか」と声をかけていただいたのと池端(俊策)さんの脚本という事が大きかった。

この歳になると誰も叱ってくれない

有働 これまで大河で斎藤道三を演じたのは、西田敏行さん、平幹二朗さん、津川雅彦さん。錚々たる役者たちが挑んだ役ですが、それぞれ本木さんとはちょっとタイプが違う役者さんが演じている印象です。

本木 司馬遼太郎さん原作の大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)の放映から50年近くが経った現在、新たな資料により斎藤道三の「親子二代説」が通説となりました。「美濃のマムシ」と言えば、下剋上の代名詞というのはそのままに、従来一介の油売りから一人で成り上がったとされていましたが、近年の解釈だと、道三は武士の家に生まれた、ある種エリートであり、かの戦略、調略をしてのし上がっていった有能なビジネスマンでもあると。こういった合理主義で少々エキセントリックなニュー道三の像を描くために、新しい感覚でキャスティングを考えたそうです。僕もそれを面白く感じ、お引き受けしました。

有働 本木さんにとっては、98年に主演された「徳川慶喜」以来、22年ぶりの大河ですね。

本木 余談ですが、「慶喜」のとき、共演した堺正章さんが「この歳になると誰も叱ってくれない」と嘆いていたんです。当時堺さんは50代。自分がズレていたり、天狗になっていないか、そういうことに気づけなくなるのが怖い、と仰って。いま自分も50代で、偶然今回の大河でも堺さんと共演するのですが、同じように役者の中でも年上になった自分が、どう立ち回れるのかも興味があります。

有働 ただ、今回の大河については、斎藤道三の娘で後に織田信長の正妻となる帰蝶役をやられていた沢尻エリカさんが逮捕され、放送開始が遅れることが決まりました。

「彼女を擁護するつもりはないけれど……」

本木 彼女を擁護するつもりはないけれど、これが実の娘であったらと思うと複雑に胸が痛みます。残念なことですが、自分としては与えられた役をきちんと全うするだけです。今作では道三をただの野心の塊ではなくて、それ相応の人間らしさと、多面的な得体の知れなさがあるように演じていけたらと思います。

有働 へえ。得体のしれないところってどういうところですか。

本木 明るい毒殺とか、まさかの嗚咽とか……。

有働 えっ。

本木 もちろん、斎藤道三のことですよ。そういった人物の人間性が感じられる、池端先生の物語がこの先も楽しみです。

嵐とSMAPに対する思いとは?

 対談では、今年2020年に活動休止を予定する「嵐」や、約3年前に解散した「SMAP」についても話が及んだ。

有働 SMAPは2016年に解散し、嵐が今年(※2019年)活動休止を発表しました。彼らについてはどんな思いで見ていますか。

本木 正直なんとも言えないですね。自分は事務所を飛び出してしまった人間ですし、私たちはアイドルがもてはやされていた時代に、活動していた数あるグループの中の一つにすぎない。一世を風靡したわけでもないし。正直、僕らが見たものと彼らが見ている景色は全く別物でしょう。自分からすると、ドームツアーって何? て感じですから。活動期間も長いし、背負っているものも味わった興奮も彼らのほうがはるかに大きくて。そこを離れるも留まるも、その解放感と不安は計り知れないと思います。

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「文藝春秋」1月号および「文藝春秋digital」に掲載の「樹木さん、裕也さん、そしてジャニーさんのこと」では、個性的な「内田家」の人々との日常から、モックンの「現実逃避法」、ジャニーズ事務所での「青春時代」、そして樹木希林さんの演技の真髄が垣間見えた「雑記帳」の中身まで、「マイフェアパーソン」初の拡大版となる14ページでお届けします。

 有働さんも驚いた、本木雅弘さんの意外な「素顔」とは――。ぜひ誌面で確かめてください。

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(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2020年1月号)