「ジャニーズの肩書きを失った山下智久」ファンがいちばん恐れているシナリオとは?

2020年11月17日

文春オンライン

 2020年11月10日。文春による報道から遅れること数時間、山下智久さん(35)のファンクラブ会員の元に、「ファンクラブ会員の皆さまへご報告」なるメールが届きました。本メールの受信時刻は20時5分。暗黙の了解として、ジャニーズが夜に放つメールの朗報率は、とても低いです。

 メールに記載された会員ページに飛ぶと、山下さんが10月31日をもってジャニーズ事務所を退所したこと、理由はオファーを受けた海外作品に参加するためであること、ファンクラブ終了に伴う会費返金の案内、そして山下さんからの「ファンの皆様へのご挨拶」が記されていました。

 会員ページは11月30日まで閲覧でき、また11月以降の年会費は返金されるそう。すでに退所したタレントのページを引き続き公開するのは、いわばロスタイムのような措置と言えるでしょう。

いちばん怖いのは“会えなくなる”こと

「事後報告ではなくなぜもっと早く、本人や事務所から発表できなかったのか?」という不満がまったくないと言ったら嘘になります。

 ただ、タレントが事務所を離れる際にファンがいちばん恐れるのは“会えなくなる”こと。山下さんの場合はすでに海外映画やドラマ出演を決めていて、約500万人ものフォロワーを抱えるインスタグラムもあります。山下さんは退所後すぐに「今後の活動に関しては、準備が整い次第インスタやSNSを通じてお知らせする」旨を発信し、“会えない”ことへの不安は早々に払拭してくれました。

 事務所の枷を外してこそ飛べる空もあるし、間髪入れず新活動にシフトできるのは彼の大きな強みでしょう。

 ではこの時代、“辞めジャニ”を待ち受けているのは“約束された楽園”だけでしょうか。また、“自担(推し)”に辞められたファンにとって、「自担がジャニーズの肩書きを失うこと」はどんな意味を持つのでしょうか。

 山下さんに限らず、“ジャニーズの肩書き”が外れると、ファンの心には様々な変化が起こります。

「あんなに支えようと思っていたのに」

 私がTwitterで利用している匿名質問サービスに、元ジャニーズグループ「Love-tune」(現在は「7ORDER」として活動中。全メンバーが2018年~2019年にジャニーズ事務所を退所)のファンが複雑な胸の内を寄せてくれたことがありました。

「あんなに好きだったのに、あんなに支えようと思っていたのに、ジャニーズを辞めた彼らを見ると“なんか違うなあ”と思うようになりました。自分は冷たい人間なのでしょうか」

「私と友だちは彼らがジャニーズにいたときからずっと応援していますが、退所後、私のほうはさほど彼らに興味がなくなってきて……。ジャニーズじゃなくなると、以前ほどキラキラして見えなくなってしまいました。それはなぜでしょう? 今も応援している友だちに“興味が薄れた”とは言えません」

「7ORDER」は、ジャニーズ退所組の中ではかなり幸福な部類に入るグループです。退所後もメンバーの誰ひとり欠けることなくテレビや舞台で活躍を続け、2021年1月にはファーストアルバム「ONE」で待望のメジャーデビューが決まっています。

 これはジャニーズ時代からのファンはもちろん、新たなファンの応援も得て彼らが勝ち取った“快挙”と言えるでしょう。彼らはジャニーズを離れることで、新たな魅力を開花させました。

 それでも、前出の女性たちのように「自担がジャニーズを辞めたら、なぜか気持ちがさめてしまった」というファンも現れます。それは、ジャニーズという事務所の存在が大きすぎるからです。

「猫は家に付く、犬は人に付く」と言いますが、ジャニーズのファンの中にも猫タイプと犬タイプがいます。つまり“ジャニーズという家”に付く人と、“タレント個人”に付く人です。

 前出の7ORDERファンの女性たちは、“ジャニーズという家に所属する彼ら”に惹かれていました。

 だからこそ自担の退所に対して、「愛していたものが“似て非なるもの”に転じたような違和感」を覚えたのではないでしょうか。

 熱が冷めていくことを感じたファンは「昔と同じように推せなくなってしまった自分」を責めます。しかし、それは無理からぬことでもあります。なんと言ってもジャニーズは、50年以上の歴史を誇る“魅力の巨大装置”なのですから。

“ジャニーズ”という響きそのものの高揚感、華やかな先輩後輩の交流、ライバル同士の切磋琢磨、テレビで絶え間なく見られる姿……。途切れないエモさの渦に巻かれることに一度慣れてしまうと、その巨大装置から外れて“別のもの”になった自担が急に薄着になったようでさみしく感じ、気持ちが引いていくことはありえます。

「ジャニーズを辞めてくれてよかった」ケースも

 一方でタレント個人を応援するがゆえに、「自担がジャニーズを辞めてくれてよかった」という人もいます。

 2018年にジャニーズを退所した今井翼さん(39)ファンの女性はこんな風に話してくれました。

「私は“ジャニヲタ”ではなく、“彼のファン”なんです。他のグループに興味はないし、純粋に彼だけを見られるようになったのがとても嬉しい。最近の翼くんは得意な料理を披露したり、舞台に出たり、好きな仕事を自分のペースで楽しんでいるように思えます。ジャニーズにいたころより、安心して応援できるようになりました」

 今井翼さんはジャニーズを退所した後、2020年1月にテレビ復帰し、現在は松竹エンタテインメントに所属。ドラマ「おじさんはカワイイものがお好き。」(日本テレビ系)で主演の眞島秀和さんの同志役を好演し、12月にはライブショウ「TSUBASA IMAI Date with You」(エースホテル京都)も予定しています。

 前出の女性はこう続けます。

「翼くんの成長と、自分のタイミングが合っているのも嬉しいんです。今の翼くんの活動がしっくりくるというか。私も40代なので、ペンライトを振ってキャアキャア言うより、ディナーショーに行ったり、じっくり舞台を観るほうが感覚的に合ってきました」

 大まかに言えば、“タレント自身”に付いたファンとしては、“会えること”、そしてフィーリングに合った活動の継続が担保されていれば、自担がジャニーズを去ってもさほどのダメージはないと言えるでしょう。

 退所後には、ロイヤルカスタマーと言えるこの層を多く抱えていることが、成功への大きな後押しになります。それに加えて「ジャニーズブランドを脱いで自分のスタイルを生み出し、いかに新規ファンを魅了し、獲得できるか」が、退所後の成功を大きく左右します。

 山下さんの今後を考える前に、まずは「ジャニーズファンの特性」を分類してみましょう。タレントによってファンの色合いはかなり異なり、それによって見通しは大きく変わります。

【尊び目線】
信仰するように彼を愛し、敬う。彼のすべてが正義であり、所属や恋愛事情がどうであろうと気持ちが揺らぐことはない。長年尊び続けてきた場合、もはや“降りる”といった概念はなく、彼の存在がライフラインそのものとなっている。誠実で真摯な思いを向ける人たち。

【恋愛目線】
恋愛対象として彼を愛する。彼がどこにいようと応援するが、結婚やスキャンダルに失望して離れる場合と、気持ちに折り合いをつけて支え続けるケースに分かれる。退所した彼がそれまでより身近になった場合、思いをこじらせ、距離感を見誤った行動に出てしまう人もいる。

【ニュートラル】
アーティストとしての彼が好きで、母親目線や憧れ目線など、さまざまな立ち位置で応援する。家族やカップルで支持するケースもあり、見守り期間が長いとよほどのことがなければ見捨てない。プライベートについては、事情によってたしなめもすれば、庇いもする。

【特化】
彼の歌が好き、顔が好き、芝居が好きなど、目に入るもの、“商品”として提供されるものだけを楽しみ、本人のプライベートや人物像に深く突っこまない。恋愛報道が出た場合も、真っ先に「別に恋愛したっていいじゃん」と言えるタイプ。好きになりたての、新規のファン。

 ちなみに前出の今井翼さんファンの女性は、“恋愛目線寄りのニュートラル”とのことでした。

ファンにとって山下は“菩薩”

 そして、山下さんのファンには「尊び目線」で彼を見つめる人が多いように感じます。自分と山下さんの間に侵すべからざる一線を引き、“憧憬の菩薩”たる山下さんにひたむきな愛をそそぐ人が、とても多いのです。

 活動の性質としても山下さんは2011年にNEWSを脱退し、ジャニーズ内ですでに9年に及ぶソロ活動の実績があります。この点において、事務所を離れたことのショックは小さいと言えましょう。

「亀と山P」の活動再開も?

 また、ジャニーズが「(山下さんを)これまでと変わらず支援いただけると幸い」と表明しているのも追い風です。文字通りに受け取れば、ジャニーズの卒業生として現ジャニーズの面々とコラボしたり、時を止めたままの亀梨和也さんとのコンビ“亀と山P”の活動再開の可能性もあります。“亀と山P”の完成済みのアルバム「SI」の発売にも希望が持てるかもしれません。

 最後に、山下さんより少し前にジャニーズを離れた“辞めジャニ”の先輩たちの現状を見てみましょう。

 渋谷すばるさん(39・元関ジャニ∞・2018年末退所)は、その歌声を轟かせるべく音楽活動に注力。「二歳」「NEED」と2枚のアルバムを発表し、2021年には2度目のライブツアーも控えています。歌に邁進する姿を見せてくれるのは、もとより応援するファンにとって嬉しいところ。

 錦戸亮さん(36・元関ジャニ∞・2019年退所)は、アルバム「NOMAD」を発表したほか、赤西仁さんと共に「N/A」名義での活動も開始しました。2020年には「MAYBELLINE NEW YORK」のジャパンブランドサポーターに就任し、マスカラのPRキャンペーンにも登場しています。演技に定評のある錦戸さんには、「映画やドラマで、役者としての亮ちゃんも見たい!」と望む声も多いので、今の状況をもどかしく思う人もいるようです。

 手越祐也さん(33・元NEWS・2020年退所)は、登録者160万人超のYouTube「手越祐也チャンネル」で元気な姿を見せるほか、哀川翔さんとともに勤怠管理システム「ジョブカン」のCMにも登場。ジャニーズ時代に比べ、フレンドリーで身近さを感じさせる活動が増しています。

 3人ともジャニーズ時代はグループに在籍しており、“ソロ”としての戦いはまだ始まったばかり。新しい活動スタイルを見て「そうそう、これが見たかった!」と喜ぶ人もいれば、「なんか、変わってしまったな」と距離をとる人もいます。彼らがどんな色合いの未来を描いていくのか、引き続き注視したいところです。

 これから新たなスタイルを模索していくのは、山下さんも同じ。今後、海外に拠点を移すという山下さんにとって、“ジャニーズの~”といった冠を載せられることなく、素の名前だけで勝負できるのはむしろ望むところなはずです。

 厳しくとも輝かしい道を切り拓いて、げに美しき“勝利の笑み”を見せてくれることを願ってやみません。

(みきーる/Webオリジナル(特集班))