海王星に猛毒青酸ガスの帯 赤道付近の上空 東大研究チームなど発見

2020年10月24日

毎日新聞

 太陽系で最も遠くに位置する海王星の赤道付近の上空に、猛毒の青酸ガスとして知られる「シアン化水素」が帯状に分布していることを東京大などの研究チームが発見し、米科学誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に発表した。

 電波を観測する南米チリのアルマ望遠鏡を用いて、太陽から約45億キロ離れた天体の大気のごく微量の成分を捉えた成果で、チームはこの手法が惑星の大気環境の解明につながるとしている。

 約164年かけて太陽の周りを1周している海王星は地球から遠く、探査機による観測の機会が少ない。直径は地球と比べて約4倍、質量は約17倍。これまで大気中にシアン化水素の存在は確認されていたが、どう分布しているか分かっていなかった。

 惑星の大気を直接、採取できなくても、そこから発せられる特有の電波を望遠鏡で観測すれば、構成する成分を特定することができる。チームは2016年にアルマ望遠鏡の観測で得られたデータを解析した結果、海王星上空にシアン化水素が分布していることを確認した。

 さらに詳しく調べた結果、赤道付近でその濃度が最も高かったが、それでも約1・7ppb(ppbは10億分の1)とごく微量だった。最も濃度が低いのは南緯60度付近で約1・2ppbだったという。

 チームは濃度の違いからシアン化水素ができる仕組みを予測し、海王星上空の大気の流れも分析した。

 チームの飯野孝浩・東京大特任准教授(電波天文学・大気化学)は「冥王星を含め惑星の大気環境は分かっていないことが多く、現在の常識では考えられないことが起きている可能性がある。今後も自由な発想で解明していくことが重要だ」と話している。【柳楽未来】